2010年8月アーカイブ

狂犬病対策について

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狂犬病対策を考える場合、公衆衛生的な見地からすれば、イヌへのワクチン接種が重要です。しかし、前回のコラムに書いたとおり、今後は社会混乱が増していくことが予想されますから、その混乱に紛れてイヌへの予防接種率が低下してしまう懸念があります。現時点ですら、下記の釧路市のような事例があります。

2010年08月20日

狂犬病予防接種率70%を下回る/釧路市

釧路市内の狂犬病予防接種の接種率が昨年、WHO(世界保健機構)ガイドラインの70%を下回った。飼い主の責任で接種するのが当然だが、市がそれまで続けていた催告を昨年に限って行わなかったことが影響しているようだ。市民環境部は「なんとか70%台に戻したい」と狂犬病の恐ろしさを訴えながら、接種を強く呼び掛けている。

http://www.news-kushiro.jp/news/20100820/201008202.html

もし流行が発生してしまった場合は、ひたすら野犬やその他の感染動物を殺処分していくことが必要になります。もちろん、流行発生前と同様に、イヌへのワクチン接種率を向上させる努力も必要でしょう。ただ、これらの対策が奏功しても流行が終息するまでには一定の期間が必要になるので、流行地域では個人レベルでも狂犬病に対する注意が必要になります。

そこで、以下に個人レベルでの狂犬病対策を書いていきます。

<感染動物に咬まれる前の予防策>

1)流行地域ではむやみに動物に手をださない。
感染動物に咬まれることにより、唾液中に多量に含まれたウイルスが体内に侵入することによって感染します。ですから、まず第一に咬まれないようにすることが大切です。感染動物は狂犬病ウイルスに脳を侵され凶暴化しているため、通常はヒトを咬まない大人しい動物でも注意が必要です。また、感染源となる動物はイヌとは限りません(下図参照)。

狂犬病媒介動物.jpg2)ワクチン接種(暴露前接種
動物との接触が避けられない場合や、近くに医療機関がない場所に長期滞在する場合は事前に予防接種をすることが勧められています。十分な免疫を得るためには4週間隔で2回の接種と、その後6〜12ヶ月後の追加接種が必要です(計3回)。暴露前接種を受けていても、もし感染動物に咬まれた場合は、後述の暴露後ワクチン接種が必要です。

<万が一、感染動物に咬まれてしまった場合の対処法>

1)傷口の洗浄
傷口を石けんと水でよく洗いましょう。可能ならば、エタノールなどの消毒液で消毒します。また、傷口にはウイルスを多量に含んだ動物の唾液が付着しています。傷口を口で吸い出したりすることは、かえって感染の危険を高めることになるのでやめましょう。(参考:狂犬病のコウモリとキスした子どもたちを捜索中、米フロリダ州

2)動物への予防接種の有無
飼い犬ならば、飼い主に予防接種の有無を確認しましょう。

3)ワクチン接種(暴露後接種)
ただちに医療機関を受診し、できるだけ早く発症予防のワクチン接種(暴露後接種)を受けます。
暴露後ワクチンは、初回のワクチン接種日を0日として、3日、7日、14日、30日及び90日の計6回の接種が必要です。

前回にも述べたとおり、狂犬病は発症すれば致死率ほぼ100%の恐ろしい病気です。
国内で流行が発生した場合や、海外の流行地域に滞在する場合は、十分な対策を心がけたいものです。

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狂犬病は発症すれば致死率ほぼ100%という恐ろしい病気です。近年、日本国内での患者の発生はありませんが、世界では今なお狂犬病が流行しています。

狂犬病が大流行!バリ島ですでに20万匹が処分
狂犬病コウモリがペルー先住民襲う、500人以上が被害

世界的に感染者は多く、WHOの報告によれば全世界で毎年3万5000〜5万人が狂犬病によって死亡しているといわれています。

スクリーンショット(2010-08-26 14.41.32).png
日本でも過去には狂犬病の流行がありましたが、1957年を境に国内での患者は発生していません。検疫を強化し、イヌへのワクチン接種を徹底するなどして根絶することができたのです。もちろん、根絶に成功したのには島国であることも幸いしました。

狂犬病ウイルスは、イヌのみならず、あらゆる恒温動物に感染します。キツネ、アライグマ、コウモリなど多彩な動物が感染源になり得ますが、とくに大陸諸国ではこれら野生動物から狂犬病ウイルスに感染した動物を駆逐することは難しいようです。

では、島国である日本では今後も狂犬病の心配はないかというと、そんなことはありません。日本でも再び狂犬病が流行する可能性は十分にあります。

今後の日本は、財政破綻・失業率の増加・犯罪の増加・異常気象など・・・社会の混迷が増していく要素がたくさんあります。原発震災のような社会機能が麻痺してしまう大災害が起こる可能性もあります。

狂犬病の流行を防ぐにはイヌへの予防接種を徹底することが不可欠ですが、社会の混乱で人間が生きて行くだけでも精一杯の状況になれば、イヌの予防接種のことなどは後回しになってしまうかもしれません。生活苦から故意に、あるいは災害時の混乱などで不可抗力的に、飼い犬が捨てられ野犬化するかもしれません。

そして、野犬が増えれば、その野犬の間に狂犬病が流行するという負の連鎖も発生します。実際のところ、過去に東京では関東大震災による混乱で野犬が増えたために、それまで減少を続けていた狂犬病の発生件数が一時的に激増したといいます。

また、野犬が増え、イヌへの予防接種率が低下すれば、わずか数頭の感染動物が持ち込まれただけでも、大規模な流行を招きます。1997年まで狂犬病の発生が無かったインドネシアのフローレス島は、3年後には全島に流行が拡大していましたが、その発端は漁師の船に乗って持ち込まれたたった3頭のイヌでした。

現在は検疫によりチェックされていますが、密かに感染動物が持ち込まれることも考えられます。世界的な気候変動によって発生する大量の移民が日本へもやってくるでしょうが、彼らに紛れて狂犬病に感染したイヌや野生動物が流入してこないとも限らないのです。

狂犬病は日本にとっても決して過去の病気ではなく、今後深刻な脅威をもたらす可能性のある疫病だという心構えを持っておくべきでしょう。




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新たな耐性菌の出現

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ほとんど全ての抗生剤に対して耐性を持つ細菌が欧米で広がりつつあるということが問題になっています。「スーパー細菌」と報道しているメディアもありますが、新種の細菌が見つかったというわけではありません。細菌自体は、大腸菌と肺炎桿菌(クレブシエラ菌)という既知のありふれた細菌なのですが、その中の一部が、薬剤耐性を生じる遺伝子を獲得することにより耐性菌になったということです。

この耐性菌について、ネット上で収集した情報を箇条書きにしてみます。


・これらの細菌はNew Delhi metallo-lactamase-1(NDM-1)遺伝子を持っている。
・New Delhi metallo-lactamase-1は細菌に薬剤耐性を持たせる酵素の名前である。
・NDM-1遺伝子を持った最近は上記の酵素を産生することによって、抗生剤に耐性を持つ。
・細菌感染の治療で最後の切り札として使われる強力な抗生剤としてカルバペネム系抗生剤というものがある。NDM-1遺伝子を獲得した細菌はこのカルバペネム系抗生剤が効かない。
・NDM-1遺伝子は細菌の種類を超えて伝播しうる。現在は大腸菌と肺炎桿菌で確認されている。
・NDM-1遺伝子をもつ細菌に対して例外的に効力のある抗生剤が2つある。
   tigecyclineとcolistinである。
・tigecyclineは日本では認可されていない。
・colistinは商品名コリマイシンとして日本でも発売されている。
・インドやパキスタンへのメディカルツーリズムにより感染が拡大した可能性がある。



現在わかっているのはこんなところでしょうか。

インドなどへの美容形成目的でのメディカルツーリズムで感染した可能性が指摘されているように、現状では院内感染として問題になるものだと思います。今後、細菌間にNDM-1遺伝子の拡散が進み市中でも認められるようになる可能性も否定できませんが、今のところは日本に住む私たちができることは、院内感染の基本を忠実に実行することくらいしかないように思われます。

もしこの耐性菌が日本でも確認され感染拡大した場合に懸念されるのは、治療薬の問題です。

NDM-1の耐性菌に有効とされる二つの抗生剤のうち日本でも使用できるのはコリマイシンです。ただ、コリマイシンは医療現場での使用頻度の少ないマイナーな薬剤であり流通量が少ないと考えられ(つまり、パニック的に買い占められたらすぐに品薄になる)ますし、剤型が内服薬しかないため敗血症などの重症感染症を起こした場合にどこまで効果があるのだろうかという問題があります。

そう考えると、日本で未だ認可されていないtigecyclineについても、いざという時に使える武器を増やしておくという意味で、早めに認可しておくほうが良いように思われます。









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